熱伝導体として冷却面を形成する金属箔の裏側に水分拡散材として繊維層を積層させて気化冷却面を形成し、
この金属箔には繊維層への貫通スリットまたは小孔を設けたことを特徴とする人体用放熱シートです。
●作用
この発明は気化熱と気化冷却面の最適含水量に着目したもので、
流量制限路としての貫通スリットまたは小孔により水分拡散材として繊維層に供給される水の量を一定にします。
それにより気化冷却面が水没することを防ぎ、気化実効面積の減少もなく、また、気化熱により冷却された水が付近の水とともに排出されることもなくなるため、
有効に金属箔自体で冷却面を冷却することが可能となります。
また、人体は冷却されると発汗が減るため、
気化冷却を使用しない放熱器と違い、その場合、気化冷却面の乾燥に伴い放熱に占める気化冷却分が低下して
熱抵抗が上昇するため、体自体の冷却の自動調整作用を妨げません。
●特許
特開2005-119068 の発明ですが
2009年6月9日に晴れて特許登録査定となり、同7月10日に 特許第4339071号 となりました。
2009年10月7日に特許広報(B2)に載りました。
[特許証 特許第4339071号 人体用放熱シート]
[Download] 詳細(特許広報)はこちらからダウンロードできます。特許第4339071号 (pdf, 100kB)
●ヒストリー
2001年の コカ・コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレース「鈴鹿8耐」と もてぎオープン7時間耐久レース「もて耐」を通じて、
レース中の暑さのラップタイムへの影響から身体、特に頭部の冷却の重要性を感じ、
模擬レースや残暑のツーリング中の冷却の実験/研究を始めました。
2002年の「もて耐」に試作品を実戦投入、予選前のフリー走行に出た国際A級ライダーをして1ラップでピットインせしめ、
「やべぇ、これ冷え過ぎ! 板氷当ててるみたいだ!」と言わせしめた "超高性能" な試作品をデチューン(故意に性能を落すこと)して予選に望み 、予選/7耐本戦を通じて酷暑の耐久レースを戦う選手達をサポートしました。
●最適化
積層体を矩形に折り畳んだものでは素材や各種寸法に最適値があります。
それは、空気の流速や粘性抵抗や気化面付近の乱流の程度、
金属箔の熱伝導度や比熱、気化冷却面の繊維層の厚さや密度や繊維の細さ、
素材や界面状態による気化しやすさ等に依存します。
最適化には人体の発汗特性なども含めると複雑で様々な要因がありますが、
実用化においては出来るだけ高性能となるように冷却シートを構成し、
温度と速度域と必要な熱抵抗に合わせて冷却面に生地を追加する等して、
冷却性能が下がるようにして調整しています。
応用においては実装と走行風の導入が最大の問題点ですが、
ヘルメットやレーシング・スーツのような支持体がある場合には
比較的うまく使えているようです。
[ 人体用冷却シート(試作品) 拡大図]特許出願中にも最適化を続け、低速な自転車や長距離ランナーにも適応できるよう 研究を重ね、最近では 2009年 筑波8時間耐久レースinサマー23rd にも実戦投入しました。
●商品化に向けて
登録料の納付も済んで 2009年7月24日に特許証が手元に届き、
現在、商品化に向けて関連各社に売り込み中です。
耐久レースを戦うレーサーや限界に挑戦し続けるアスリート、
炎天下での作業や観測をする技術者や長時間の外科手術関係者など、
汗だくで本気の方々を少しでもサポートできるようにこの特許が応用されることを願ってやみません。
ご興味のある方は是非、お気軽に下記メールアドレスまでご連絡下さい。